dellblorin日記

袖擦り合うも他生の縁

サマータイム導入の愚

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現在、森喜朗氏の旗振りの元、2年後の東京五輪の暑さ対策として「サマータイム」の導入が提唱されている。私は反対だ。以下、理由を挙げる。

サマータイムの本来の意義は省エネ対策だ。しかし、最近はむしろエネルギー消費量が増えるとの主張がある。サマータイムが最初に導入されたのは第一次大戦中のドイツとイギリスだが、この頃は家庭のエネルギー消費量は少なかった。現在は多くの家に多くの家電があり、特に夏に電気代を食うのがエアコンだ。

サマータイムを導入すれば職場の空調を削減できるが、その分家庭の空調が大幅に増加するためトータルでは電力消費量が増えるという試算がある。事実、アメリカのインディアナ州は2006年にサマータイムが導入され、その後のエネルギー消費を調べた結果、電力消費量が1%増え、電気代は900万ドル増加したという。

サマータイムを先に導入した欧州では、現在サマータイムの廃止が検討されている。EUが実施した世論調査では2015年のフランスでは54%が反対、2017年のドイツでは74%が廃止と答えている。2018年1月にはフィンランドが7万人の署名を集めサマータイム廃止を提案した。そもそも世界的には一度実施したが後に廃止したという国も多く(実は日本も含む)、サマータイム金科玉条の如く押し頂くのは間違いだ。

サマータイムには仕事の効率低下と健康被害が指摘されている。人体は機械とは違うため、今までの生活サイクルを突然変えることはできない。これは海外旅行で生じる時差ボケなどを考えれば分かるだろう。サマータイムは人の体内時計を乱し、それによる体調不良が起きても不思議ではない。

事実ロシアでは、サマータイム切り替え時期に心筋梗塞などが多発し、生体リズムに反していると(さらに省エネ効果もほぼなし)2011年の実施を最後にサマータイムを廃止している。

サマータイム実施による残業増加も懸念される。仮に出勤時間が2時間早くなったとして、果たして退社時間も2時間早くなるだろうか。サービス残業やブラック労働が指摘される現代、きっと大丈夫だろうと考えるのは浅はかだ。

東京五輪の暑さ対策は東京の問題であって国中を巻き込む必要はない。暑さ対策だけなら競技開始時間を2時間早めればいいだけである。

参考文献 夏時間、EUで廃止論 是非判断へ世論調査 サマータイムの効果は?〜日経サイエンス2009年5月号より サマータイム -健康に与える影響- サマータイム実施は不可能である