dellblorin日記

袖擦り合うも他生の縁

どうして鳥貴族は値上げに失敗したか

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焼き鳥チェーンの鳥貴族は、2017年10月にメニュー価格を280円から298円へ28年ぶりに値上げした。結果、既存店の売上が15ヶ月連続(3月まで)前年割れしているという。株価も17年末の4,000円近くから1,893円(4月26日時点)と半値以下に落ち込んでいる。

ネットでは鳥貴族の値上げ失敗の理由として、珍説が人気を集めていた。

togetter.com

タブレット導入が客離れの原因だという。この手の珍説(荒唐無稽なのだが、どこかなるほどと思わせる奇抜な主張)は人気を集めるが、とても本質的な原因とは思えない。鳥貴族が値上げに失敗したのは、単に市場の寡占度が低いからだろう。

ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)は市場の寡占度合いを示す指数だ。各企業のシェアを2乗し、その合計を算出して求められる。数値が高いほど寡占度が高いことを意味し、1800超で寡占度が高いとされる。

最近、値上げで成功した企業といえばクロネコヤマトだろう。宅配便市場は上位3社(ヤマトHD、佐川、日本郵政)で3,000を超える。競合が10社以上と多ければ値崩れが起きやすく、ライバル社を警戒して値上げに追随もできない。

鳥貴族は競合ひしめく居酒屋市場のプレイヤーだ。居酒屋市場は約1兆円と大きいものの、鳥貴族のシェアは3%にすぎない(売上高300億円)。6%の値上げを敢行したが他社は追随せず、客離れを引き起こしてしまった。

タブレット導入説は面白いが、真実は大抵平凡でつまらないものなのである。