dellblorin日記

袖擦り合うも他生の縁

自虐マーケティングの愚かさ

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日系ビジネス19年9月号を読むと、企業の間に自虐マーケティングが流行しているという。自虐マーケティングとは自社の欠点をあえて利点として売り込む広告手法だ。

例えば三重県志摩スペイン村は客が少なくガラガラなので、インスタグラム用にいい写真が撮れますというのをアピールし、若年層を中心にSNS上で大受けした。実際来場者は増加したという。

他にも銚子電鉄が経営状態がまずいことに引っ掛けた「まずい棒」という駄菓子を売り出し成功、埼玉が「飛んで埼玉」という自虐的映画を作成し、興行収入37億円を突破したりと成功例がある。

だが、不用意な自虐で炎上した例もある。キリンビバレッジの午後の紅茶は、午後の紅茶を飲んでいそうな女性像として「モデル気取り自尊心高め女子」などと謳い女性蔑視と批判を受けた。

自虐マーケティングは筋の悪い手法としか思えない。マーケティングとは自社の商品の素晴らしさをアピールするものであり、それを競合各社が行うことでジャンルそのもののイメージがよくなり、結果、市場規模が拡大し皆が得をするのだ。

商品の欠点をあえて強調することで、一時面白がられるかもしれないがすぐ飽きられる。しかし、一度刷り込まれた悪いイメージは中々無くならないだろう。瞬間的には売上が増えたとしても長期的には減少する。タコが自分の手足を食べて空腹を凌ぐようなものだ。

自虐マーケティングは企業から依頼されたマーケティング会社が担っていると思う。彼らは今は自虐の時代ですと熱弁して、企業を騙しているのかもしれない。彼らは瞬間的に結果を出せれば成功で、長期的な視野を持たない。マーケティング会社の提案をホイホイ鵜呑みにすると「午後の紅茶」の二の舞いになるだろう。

自分達の商品を悪い物ですと言って売ろうとするのは、健康のために青酸カリを飲むようなもの。経営がのっぴきならない企業が最後の大博打としてやるなら分かるが、安定した企業が自虐マーケティングに手を出すのは合理的とは思えない。

自虐マーケティングとはあくまで異端の手法なのである。