最近、PCR検査を増やせという声が大きくなっている。そのような事をして大丈夫なのかと色々調べてみた。
まずPCR検査の基本をおさらいする。感染者を正しく陽性と判定する確率を感度、感染していない人を正しく陰性と判定する確率を特異度という。そして感度、特異度を100%の確率で判定できる検査は存在しない。
仮にPCR検査の感度を70%、特異度を99%とし、感染者数5人に対し検査人数10人(有病率50%)で計算すると以下になる。
10人(有病率50%)
真陽性 3.5人(感染者5人×0.7)
偽陽性 0.05人(非感染者5人×0.01)
真陰性 4.455人(非感染者5人×0.99)
偽陰性 1.5人(感染者5人×0.3)
感染者5人中1.5人が偽陰性(感染しているのに陰性)、非感染者5人中0.05人が偽陽性(感染してないのに陽性)となる。感染者で実際に陽性だった人の比率(陽性的中率)は約99%(真陽性3.5人 ÷ (真陽性3.5人+偽陽性0.05人))となる。
今度は検査数を増やしてみる。検査自体が感染を増加させるわけではない。そのため検査数を増やすと有病率は低下する。感染者数を据え置いて10倍の100人、1000倍の1万人を検査したとする。
100人(有病率5%)
真陽性 3.5人(感染者5人×0.7)
偽陽性 0.95人(非感染者95人×0.01)
真陰性 94.05人(非感染者95人×0.99)
偽陰性 1.5人(感染者5人×0.3)
1万人(有病率0.05%)
真陽性 3.5人(感染者5人×0.7)
偽陽性 99.95人(非感染者9995人×0.01)
真陰性 9,895.05人(非感染者9995人×0.99)
偽陰性 1.5人(感染者5人×0.3)
10人の陽性的中率は約99%だったが、100人は約79%、1万人は約3.4%まで低下する。そして10人で0.05人、100人で0.95人、1万人で99.95人の偽陽性(濡れ衣)を出すことになる。
有病率が高まれば反対に偽陰性(見逃し)が増える。例えば有病率10%で1万人を検査すれば10人偽陰性と判定される。そのため、むやみに検査数を増やすのではなく事前に医師が絞り込みを行い精度を上げている。
ネットで検索してみるとPCR検査は感度30~70%、特異度99%程度ではないかという情報が多い。これが正しければとても検査数は増やせないだろう。イムノクロマトやGenSoc等、他の検査はもっと精度が低かったり、そもそも精度が不明という有様だ。
現在、日本は感染爆発を起こしていない。有病率が低い状態で検査数を増やせば偽陽性が多数現れ混乱必至だ。海外は日本より桁違いに多くの検査を行っているが、当初はその所為で医療現場がパンクした。現在はそれを教訓に自宅待機が浸透しているらしい。
上記の記事では時間さえあれば医療現場の崩壊を起こさない体制作りは可能という。そうだとしても偽陽性と偽陰性の問題は解決していない。真偽問わず陽性と判定されれば二週間の自宅待機を要請され、濃厚接触者も調査され迷惑を掛ける。今はまだ「希望者全員にPCR検査できる体制を」とするには早いのではないだろうか。
例えば日本がヨーロッパ並みの感染爆発を起こしていたとする。例としてイギリスを選ぶ。イギリスは人口6665万人(2019年)、感染者数約20万人だから、人口1億2650万人(2018年)の日本に当てはめると約40万人の感染者がいることになる。有病率は約0.316%。