dellblorin日記

袖擦り合うも他生の縁

ネットに遺賢は存在しない

f:id:dellblorin:20200210172903j:plain

テレビ、雑誌など色々な媒体に「私は何でも知っているキャラ」がいる。豊富な知識と深い洞察、彼らに比べれば政治家、官僚、学者や研究者、さらには企業経営者など既存勢力のプレイヤーはバカの集団に見えてくる。それは今やネット上にも溢れ、アルファブロガーとかインフルエンサーなどと呼ばれている。政治や文化、科学などに論陣を張る人もいれば、特定業界の専門家として業界批判をする人もいる。

彼らは既存勢力がどれほど愚かで、当たり前の事が分かっておらず、如何に社会を非効率にしているかを批判する。同時に自分が如何に既存勢力より優れており、知識豊富で、価値ある人間かを遠回しにアピールする。彼らのまるで出来の悪い子供とそれを叱りつける親のような態度を見ていると、彼らが知的超人で、知らぬものはなく、既存勢力の誰よりも優れた第一級の専門家に思えてくる。どうして国や企業は彼らを重用しないのか、なぜ在野に放っておくのか、なぜ業界のトップランナーの一人ではないのか。その社会的損失を想像し焦りと苛立ちを覚えてしまう。きっと彼らは運が無く、既存勢力の妨害を受ける被害者であり、本来居るべき場所、携わるべき仕事から排除されているのだ。そんな社会は間違っているし、そんな社会を構成する既存勢力は許しがたい。

しかし、同時にあなたの中にこんな疑問も生じる。なぜこんなに頭の良い人達がテレビのコメンテーターや雑誌のコラム、講演などで小銭稼ぎするんだろう? なぜ毎日のようにブログやツイッターを更新して、アフィリエイトやメルマガなんてケチな商売で稼いでいるんだろう?

ノーベル賞受賞は偉業であると誰もが認めるに違いない。多くの人はその受賞者をニュースで初めて知ったはずだ。彼らは本物のエリートであり、本物であるがゆえに真摯に研究に打ち込んでいる。偉業は一朝一夕で達成出来ない、持てる時間と労力の多くを注ぎ長年に渡って打ち込んでようやく達成される。彼らは常に多忙でありテレビや雑誌に出演する暇も必要もない。ましてブログやツイッターをやる時間も無い。1流人は専門にしている分野では有名かもしれないが、世間一般では無名なのが普通だ。

テレビやネットで活躍する知識人は、こうした1流知識人の模造品だ。本業で通用しない2流人がテレビで活動し、テレビにさえ出られない3流人がネットで活動する。ネットで人気が出た人は積極的にテレビを目指すが、テレビからネットに来るのは落ち目人間だけである。

2流、3流人の特徴は、知識を眼から入れて口から出すだけであることだ。彼らは勉強はでき知識を覚える事も出来たが、それを応用出来ない。勉強の才能があっただけの人と言い換えてもいいかもしれない。彼らは社会に出ると競争に破れ弾き出されるか、現状の待遇に我慢できず自ら去る。そしてその業界に近い場所で、ただ知識を眼から入れて口から吐き出すだけの仕事を始める。

彼らが何かの間違いで本当に責任ある立場に就くと途端に馬脚を現す。知的超人と思われていた人物が実は何事も実現できず、何事も治められない事実が白日の下に晒される。口では今挑戦している人達を厳しく批判し、無能と言い立て、自分なら簡単に解決できるかのような発言を繰り返すが、其の実、決してその立場に就くことはなく、いよいよ選ばれそうになると姿をくらます。

本物は本業に忙しい。本業を疎かにして副業に勤しむ人に本物はいない。似非知識人、僭称専門家でインターネットは溢れている。