dellblorin日記

袖擦り合うも他生の縁

JASRACの執念と改正著作権法

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朝日新聞によると、泣く子も黙る著作権管理団体JASRAC音楽教室に2年にも渡り潜入調査をしていたらしい。

headlines.yahoo.co.jp

JASRACの職員が生徒として教室に通い、裁判で証人として出廷する予定という。JASRACが極めて厳しい姿勢を見せる団体なのは知っていたが、ここまでやるのは驚きだ。

ネット上ではJASRACを批判する主張が大勢だ。国内で禁止されているおとり捜査である点を批判する意見もあるが、それは警察の話だから本件とは無関係だろう。

そもそもJASRAC音楽教室と揉めたのはこれが初めてではない。2018年も音楽教室に対し、それまでの発表会だけではなく教室での演奏にも使用料を請求した。

president.jp

使用料支払いの論点は「公衆に聞かせるための演奏」かどうかだ。著作権法第22条は「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演し、又は演奏する権利を専有する」と定められている。

音楽教室側の主張は、授業はマンツーマン、多くても数人という少人数、且つ教育目的の演奏であり、「公衆に聞かせるための演奏」に該当しないという立場だ。だが、今までの判例を参考にする限り、旗色は悪いらしい。

www.nikkei.com

shuchi.php.co.jp

上述の裁判は係争中だが、そんな中で今回の騒動が起きた。朝日の記事は潜入していた職員の発言を紹介している。

「とても豪華に聞こえ、まるで演奏会の会場にいるような雰囲気を体感しました」

これは「公衆に聞かせるための演奏」を行っていた、ということを強調したい思惑が透けて見える。主観的で客観的な証明にはならないが、だからといってそう感じなかったはずだとも証明できないだろう。

全体としてJASRACのとった行動はお行儀が悪いと感じるが、以前からJASRACは叩かれ過ぎではないかと思っていた。世の中は圧倒的に作る人より、消費する人が多い。JASRACの様な団体が叩かれやすいのはそれも一因だろう。

しかし、作る人がいなければ消費も出来ない。JASRACは登録された楽曲を守り、利益を最大化する団体だから、法が許す範囲で最大限の行動をとるのは当然だ。

彼らが不興を買うほど仕事熱心であるから、作り手は利益を得られるし作り続けることが可能になる。枝の剪定どころか幹まで切り落せば元も子もないという人もいるだろうが、これは法改正で何とかするしかない。

2019年1月から施行された改正著作権法は、こういった問題を緩和するための内容も含まれている。それが第30条の4で、「当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」は著作権侵害に当たらないとしている。

elaws.e-gov.go.jp

音楽教室側はこの新たな著作権法を盾に、教室での演奏に使用料は発生しないと主張している。まだ係争中だからどうなるか分からないが、多くの人が納得しやすい判決になることを願う。

そしてJASRACはもう少し行儀よくすべし。